「普通」じゃない学校を卒業して社会に出た人間のひとりとして

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(前編)http://bigissue-online.jp/archives/1003271240.html
(後編)http://bigissue-online.jp/archives/1003271565.html

通信制高校の卒業はすべて「自分次第」

ビッグイシュー・オンラインに掲載されていた、通信制高校に通う生徒の実情。大体当たっています。私が通っていた10年前こそ、「労働と学業の両立」という意識が強く、実際、50代のトラック運転手の方も通っていて、仕事と両立しながら卒業されていました。しかしながら、昨今はまさしく、ここに書かれているとおり「中退者の再チャレンジ」「不登校者の受け皿」という意味合いが強くなっていると思います。

通信制高校は卒業するのが大変です。すべて自分の力だけで卒業しないといけません。全日制の学校のように「ちゃんと学校来いよ」と言ってくれる先生はいません。卒業までの計画を、自分自身ですべて決めないといけないのです。提出書類、単位取得のためのテストの受験等の手続きも、すべて自分で行います。「来週までに持って来いよ」とか教えてくれません。だから、いつの間にか退学していく生徒も大勢います。入学してから一度も出席せずに退学とか普通です。通信制高校の場合、一年次の進級、そして卒業すること自体、非常にハードルが高いのです。

ここで書かれている「卒業者の2人に1人は進学も就職もしない」は、ちょっと大袈裟かもしれませんが、データで証明されているそうですので当たっているのでしょう。ただ、卒業しても、高校や大学のように新卒者を対象とした求人はありませんし、卒業後の進路も自分で決めないといけません。学内に就職支援課があって、新卒で就職が決まるまでマンツーマンで支援してくれるなんて、まずあり得ません。新卒枠なんてものもありません。一般社会人枠(既卒枠)での就職活動になります。

卒業までの苦難、卒業したあとの苦難

通信制高校を卒業した人たちに対する風当たりというか、偏見の目が強いことは事実です。

普通に暮らしてきた人たちは、周囲に通信制高校を卒業した人がいないため、まず「通信制高校」そのものを知りません。そして、「通信制高校」が正規の教育課程であることも知りません。就職面接等で、「通信制高校を卒業しても高校卒業って言えるんだ」と言われたことすらありました。「通信制生涯学習」のように捉えている人も、きっと少なくないでしょう。

中でも「中退⇒通信制」の場合、就職面接等で必ず中退の理由を聞かれます。そして、どう答えてもマイナスイメージとなり八方塞ですから、自然と社会に対する見方・考え方も卑屈になりがちです。通信制高校に入学するまででさえ成功体験を積めないというのに、卒業してからも評価は低く、苦難の道を歩まざるを得ないのです。

以前、不登校に関するフォーラムで、ゲストスピーカーとして体験談を語ったことがあり、そこでもお話をさせていただきましたが、「普通」で「まとも」な人間が、社会に必要とされている人材のベースにあるのだと常々感じています。「6334」のストレートなレールで学生生活を歩んできた人間が「普通」で、そこから少しでも道を外れてしまうと、社会からは相手にされない。馴染めない。自分の過去を語れない。ある一定の年齢になるまで、偏見の目で見られてしまう。

私は、その偏見を拭いたくて、通信制高校卒業後に大学へ進学しましたが、現在の履歴書には書いていません。とてもじゃないですが「大学入学」なんて書けないレベルで中退しました。通信制高校を卒業したものの、社会はおろか親からでさえも否定され続けた結果、疲れ切ってしまい、大学に通うだけの力はもう残っていませんでした。ある種の対人恐怖症だったのかもしれません。残ったのは強烈な学歴コンプレックスだけで、これは今も拭い去ることはできません。

若い人たちと話すと、大学を卒業していることが至極当たり前のように話します。「どこの大学を出ているんですか?」今さら高卒なんて言えません。そして、今働いているNPOの世界や、それらを取り巻く行政機関をはじめとした業界にも、高学歴者が非常に多いですから、同じ目線で話をするのがとても大変です。東大卒、京大卒の人たちと仕事に関する意見交換をしていますが、ざわめく自分の学歴コンプレックスを必死になって抑えながらやりとりをしています。

岩切:質問をしたいのですが、少子化が進むなかで、どうして通信制高校は増加しているんですか?普通に考えると減りそうなものですが。

今井:学校数も生徒数も増えています。構造改革がありまして、今は株式会社でも高校を作れるんです。たとえば、トヨタが学校を作った例で、全寮制の海陽学園がありますよね。あれは株式会社立です。そうした構造改革で、学校数が増えています。

生徒数でいうと、いくつか要因があるなかで考えられるのは、一般的な学校に合っていない生徒が出てきているんじゃないかな、と。情報も価値観も多様化しているなかで、通信制高校は自分のリズムで通えて、カリキュラムもバリエーションもあって生徒のニーズに合っていて、選ばれやすいというのがあるのかな、と思います。

家庭の事情等もあり、通信制高校を選択する、あるいは選択せざるを得ない場合もあると思います。人それぞれの生き方や事情ですから、私がとやかく言えません。ただ、経験則から言わせていただくと、今後の人生である程度の“覚悟”をしておいた方が良いでしょう。「普通」の人よりもたくさんの茨の上を歩くことになる、ということです。

通信制高校に進学すればこそ、大学進学を強く意識する必要があるでしょう。大学を留年することなく卒業することで、挽回の機会も巡ってきます。最終学歴が大卒であれば、そこまでの過程はすべて上書きされるわけですから。ただ、孤独な通信制高校生活で、大学進学のモチベーションを持ち続けることは非常に大変です。そして、万が一大学へ進学することができず、通信制高校を卒業して社会に出なければならなくなったとき、普通の人が歩むレールから外れて社会に出るわけです。

そうなったとき、社会に出たときの自分に対する風当たりの強さに、ショックを受けると思います。社会というものは、社会に出る過程が「普通」から外れた人に対しての反応が、良い意味でも悪い意味でも非常に敏感であるということを、覚えておいたほうが良いでしょう。

もし、自分が「普通」のレールから外れたルートを歩んだ場合、さまざまな困難に直面すると思います。自ら道を切り拓いていく中で、茨どころではない道を歩んでいく場合もあります。そんなとき、どうしたら前を向いて歩いていけるのか。希望を持って世の中を生きていけるのか。自分が「普通」じゃない生き方をしてきたからこそ、挫折しないための準備を、常に心掛けておくべきだと思います。