半分は自分を殺して半分は相手の話を聞く

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「新しい仕組み」を創り出そうしている人に読んでほしい内容だった。

先日ネットサーフィンをしていたところ、2008年10月27日に開催された「東京コンテンツマーケット2008」で、富野由悠季監督がトークセッションで語った内容が、ITmediaニュースに掲載されているのを見つけたので読んでみました。

富野由悠季監督と言えば、『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』といった名作アニメの原作・監督を務める傍ら、同名の小説版の執筆や「井荻麟」名義で主題歌の作詞等も手掛ける、多方面で活躍するトップクリエイターの一人です。その彼が、当時集まったクリエイターたちの前で、真正面から「プロ論」を投げかけています。

全体的には、これから新しいものを生み出して、それらを芸術・文化へと昇華させていこうと努力しているクリエイターたちに向けての言葉ですが、一方で、これらの言葉はアーティスティックなクリエイターたちの世界に向けてだけではなく、「これから何かを立ち上げよう」「社会的な新しい仕組みを創り出そう」と考えている人たちにも有益だと感じました。

個人的に共感した部分を以下にまとめます。

お前程度の技能や能力でメジャーになれると思うな

「お前らの作品は所詮コピーだ」――富野由悠季さん、プロ論を語る (3/5) - ITmedia ニュース

チームワークやスタジオワークは決定的に重要です。こういう所に集まって仕事しようとしている人たちはほとんど我が強いんです。隣の人の言うことは絶対聞きたくないという人がほとんど。だからダメなんです。お前程度の技能や能力でメジャーになれると思うな、なんです。

宮崎駿は1人だったらオスカーなんか絶対取れませんよ。個人的に知っているから言えるんですが。彼は鈴木敏夫と組んだからオスカーが取れた。組んだ瞬間僕は「絶対半年後に別れる。こんな違うのにうまくいくわけがない」と思いました。知ってる人はみんなそう思ったんです。

それがこういう結果になったということは、あの2人が半分は自分を殺して半分は相手の話を聞いたんです。みなさん方も、お前ら1人ずつじゃろくなもの作れないんだから最低2人、できれば3人か4人。スタジオワークをやる気分になってごらん。そしたらあなたの能力は倍、3倍になるはずだから。オスカー取りに行けるよ、という見本をスタジオジブリがやってくれているんです。

当事者はそういう言い方しないから脇で僕がこう言うしかない。宮崎さんが公衆の面前で「鈴木がいてくれて助かったんだよね」と本人は絶対言いません。どう考えてもあの人、1人では何もできなかったんです。「ルパン三世」レベルでおしまいだったかもしれない。本人に言ってもいいです、知り合いだから。

そういう時期から知っているから、そこでの人の関係性も分かってますから。我の強い人間のタチの悪さも知っています。みなさんもそうですよ。隣の人に手を焼いているとか、「あいつがいなけりゃもっと自由にできる」と思ってる人はいっぱいいるだろうが、若気の至りでそう思ってるだけだから。若さ故の過ちというやつですよ(笑)。これ、笑わなかった人は笑った人に理由を聞いて下さい。それは絶対にあるの。

この部分は、アーティスティックなクリエイターだけではなく、仕事全般において最も大事なことだと思いました。誰だって、自分にとって居心地の良い人と仕事をしたい。でも、それだけでは自分の力は高められない。自分を殺して相手を受け入れる。そうやって切磋琢磨することで、全体をレベルアップさせることができるのではないでしょうか。

私は現在NPO業界で働いていますが、周囲を見渡すと、自分に自信のある人たちが非常に多い。それは、自分自身が社会の課題を発見し、解決するためにNPOを立ち上げ、その課題をどのように解決すべきかを、常に膨大な知識と最先端の視点で考え実行しているから。でも、一人でできることなんて限られているし、才能や能力にだって限界があります。

そして、それを組織的に上手にやりくりしている人は、上記引用文の「スタジオワーク」で作業を進めている。NPO業界も、良い意味でも悪い意味でも「我の強い人たち」が多い業界ですが、器用に自分を殺しながら、相手のことを受け入れながら、組織で作業を進めることを大事にしている。反面、代表の想いや我が強すぎるNPOは、周囲との調和が取れず、ギクシャクしていて活動もままならない。

個人的な意見として留めておいていただきたいのですが、いくつかのNPOを見てきて、漠然とそんな印象を持っています。僕が知る中で、一人でほぼ完璧にこなしていらっしゃる方は、現時点で一人しか思い浮かびません。もっとも、この方は全国的にも稀有な方だと思いますが……。

仕事のパートナーとキャッチボールできるフィールド

「お前らの作品は所詮コピーだ」――富野由悠季さん、プロ論を語る (4/5) - ITmedia ニュース

一番目指さなくちゃいけないのは、34~35までに、40になってもいいと思うけど、パートナーを見つけるべきだということです。もっと重要なのは、その人とキャッチボールができるフィールドを手に入れていくこと。

ビジネスを大きくしたいなら、そこで必要なのはチームワーク。悔しいけど相手の技量を認めるということです。僕は例えば安彦君の技量は全部認めます。あの人の人格は全部認めません。大河原さんの技量は認めません。大河原タッチは大嫌いです。でもそれは絵のタッチのこと、デザインはまた別です。「惚れたら全部正義」と思うのがいけない。何を取り入れて何を捨てるか、ということをしなくてはならないんです。

仕事をする上でのパートナーを見つけることの重要性が、ここで語られています。特徴的なのは、年齢に具体的なリミットを設けていることです。長期的なスパンで考えると、この年代からパートナーとキャッチボールを始めないと、将来的には三冠王や優勝は目指せない、ということなのかもしれません。

先日、日本財団職員が講師を務めるNPO向けの助成金セミナーに参加しましたが、民間助成団体の近年の傾向として「NPO単独での事業ではなく、行政や企業など、他のセクターと協働で行う事業の申請に対して助成する」という方向にシフトしてきているそうです。団体だけで事業を遂行するのではなく、他のNPOや行政機関、企業も巻き込み、それらが対等なパートナーとなって社会課題に当たる……そうしたことが求められてきているのかもしれません。そういう意味では、立ち上げる個人だけではなく、立ち上げた後の組織としてのパートナー探し、パートナー作りも、間違いなく重要になってきます。

自分が何かを立ち上げるだけではなく、会社内でのチームワークにおいてもそうですね。その人の「●●はダメだけど、○○は素晴らしい」という長所と短所を見極めて、受け入れることをしないといけない。もう少し深く突っ込むと、チームのメンバー間で「そのことをお互いが理解できているかどうか」も重要になってくるでしょう。

NPO業界でも、30代や40代で立ち上げて成功に導いている人たちが大勢いらっしゃいますが、よくよく見てみると、ちゃんと信頼し合えるパートナーがいて、キャッチボールできるフィールドを設けている(自ら作り出している)と思います。
そういう団体がグループワークに参加していると、日頃からキャッチボールが上手く行っているな……と見ていて感じます。不思議と雰囲気はすぐに伝わってきます。

まとめ

  • 「お前程度の技能や能力でメジャーになれると思うな」をまず自覚する。自分の力だけでは絶対に成功しない。
  • チームワークやスタジオワークは決定的に重要。あなたの力を数倍に高めてくれる。
  • 「我が強い人」と一緒に仕事をするときは、半分は自分を殺し、半分は相手の言葉を受け入れる。
  • できれば、40歳までに仕事のパートナーを見つける。パートナーとキャッチボールできるフィールドを創る。(個人、団体問わず)
  • パートナーのすべてを受け入れるのではなく、「何を取り入れて何を捨てるか」をはっきりさせる。適材適所。

これらの言葉は、フリーランスで活動するクリエイターだけではなく、NPO等の任意団体設立及び法人化に対しても親和性の高い言葉だったな……と改めて感じました。

もし、これから社会課題の解決に向けた起業を考えているのであれば、もう既に常識かもしれませんが、改めてこれらの要素を頭に入れておいたほうが良いのかもしれませんね。

プロ論。2

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