津あけぼの座で「人間そっくり」を観てきた。

イオンショップ

16日、三重県津市にある小劇場「津あけぼの座」で上演された「人間そっくり」を観てきた。

安部公房原作の小説『人間そっくり』を舞台化したもの。

人間そっくり (新潮文庫)

人間そっくり (新潮文庫)


あらすじはというと、

「こんにちは火星人」というラジオ番組の脚本家のもとへ、火星人と自称する男がやってくる。
はたして、彼は火星人そっくりの人間か、あるいは人間そっくりの火星人なのか?
変転する男の弁舌にふりまわされれ、脚本家は次第に自分が何者なのかわからなくなってゆく・・・。

http://akebonoza.net/120816play.html

これだけを見たら、まるで赤塚不二夫ばりに不条理で難解な設定なんだけど、これに舞台としての脚色と演出が加わると、恐怖と狂気に満ちた何とも言えない世界感が形作られる。

劇場の中は撮影しなかったんだけど、僕が座ったのは本当に舞台の真ん前。劇場自体が小さいので人口密度がすごい分、役者との距離がとても近くて、細かな表情や目の動き、滴り落ちる汗の一滴など、本当に細かい部分まで臨場感たっぷりに堪能することができた。

劇中の雰囲気みたいなものは、こちらのPVをご覧あれ。

このPVは、東京で公演されたものを元にして作っているらしく、当時の舞台の背景は白である。しかし、今回の三重公演では舞台の背景を黒一色に統一していた。すべてを観終わったあとだから言えることだが、白は白でもちろん作品世界に合っている。だが、黒は黒で空間が狭く感じるため、ただでさえ狭い場内がより狭く感じ、心理的圧迫感を醸し出す。これが良かった。「小規模劇場」であることを逆手に取った、素晴らしい演出だったように思う。

出演者は3人。“ラジオ番組の脚本家”を二口大学さん、“脚本家の妻”を広田ゆうみさん、“自称火星人”を山中秀太郎さん。なお、広田ゆうみさんは、脚本家の妻以外として登場する「女性」の役を演じている。

とにかくインパクトが強かったのが、山中秀太郎さん演じる“自称火星人”。舞台上では狂言回しも兼ねる脚本家を、時間をかけて狂気の淵へと追いつめて行く。声色、表情、動きと、彼の立ち居振る舞いを中心にして物語が動いていく。ほとんどの時間を、二口大学さんと山中秀太郎さんの二人による不条理で荒唐無稽なやりとりで進行していくのだが、途中に入る広田ゆうみさんの張りのある声色と表情が、舞台上で良いアクセントとなる。もっとも、クライマックスでは彼女の声と冷笑が、観る者に恐怖感を与えるわけだが…。

目の前で繰り広げられる役者同士の演技のぶつけ合いは、本当に迫力があった。劇場の中は暑く、役者は観客である我々以上に汗をかいていたのだが、特に二口大学さん演じる“脚本家”が汗びっしょりだったのは、“自称火星人”を名乗る得体の知れない男を目の前にした人間の「冷や汗」のようにも見て取れ、緊迫した様子を表現するのに一役買っていたようにも思う。ともあれ、最後まで「この3人の関係はどうなるんだろう」と、目が離せない作品だった。

思えば、こんなに面白い作品が津駅や江戸橋駅から徒歩数分の距離にある小劇場で観れることって、本当に幸せなのかもしれない。三重大学から近い場所にあるのだから、もっと三重大生や三重短大生なんかも観に来たり、活用したらいいのに…と思ったりもした。

そして、僕が津市に引っ越してきた目的の一つに、「気軽に演劇を観れるような生活をしたい」という目的があったことを思い出した。今、その目的は達成できつつある…のかな?(生活は厳しいけどね)

「このしたPosition!!」の皆さん、素晴らしい作品を本当にありがとうございました。

あけぼの座の場所はこちら。


大きな地図で見る