『ルパン三世』について考える

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なぜ、ルパンは盗まなくなったのか?〜ルパン三世から見える「日本病」の正体〜
http://d.hatena.ne.jp/TM2501/20120310/1331348372

大変興味深く拝読した。といっても、id:TM2501さんが語る「日本社会の遷移」みたいな部分については、難しくてあまり理解はできなかったので、ルパンの部分だけ抽出して読んで行ったが。そして、触発されて僕も書いてみる。

銭形警部が登場しないのは、納谷悟朗氏の体調の関係もあったと思うが、ルパン一味と敵対勢力との戦いに不必要なノイズとなってしまっているのは否めないと思う。最終決戦の場にルパンを追って現れて、ルパンを生け捕りにしたいという大義名分のもとに共闘し、最後には逃げられて終わり……というのが、近年のフォーマットのような気がする。挙句の果てには、記憶を消されて空気のような存在にされていたこともあった。

銭形警部や峰不二子のノイズは、連続モノのテレビシリーズでは効果的なノイズとして存在していたけれど、テレビスペシャルの場合は、敵対勢力もある意味「主役」みたいなものであり、敵対勢力のノイズを大きくしなければ成り立たない部分もあるため、もう思い切って消し去ってしまうほうが、作るほうが楽だからというのもあったんだと思う。

現在のルパンが、『カリオストロの城』の多くの要素をルールの根底にしているのは事実だと思う。現在の必殺シリーズのルールが『必殺仕置人』ではなく『必殺仕事人』として根付いているのと同じで。余談だが、『必殺シリーズ』と『ルパン三世』の歴史は、本当によく似ている。「ハードボイルド路線」⇒「娯楽ファミリー路線」⇒「原点回帰路線の失敗」⇒「テレビスペシャルシリーズの不評」⇒「新キャストによるテレビシリーズの復活」……長い歴史を持つシリーズというのは、みな似たり寄ったりなのかもしれないが。

ただ、『カリオストロの城』の後に、その路線を原点へと回帰させようとした『ルパン三世PARTIII(と青木雄三の仕掛け)』がファンから受け入れられず、また、新たな試みであった「押井守版ルパン」が制作会社とスポンサーから受け入れられず、結局従来の「娯楽ファミリー路線」と「カリオストロ路線」を中途半端に融合したものへと転換せざるを得なかったことを考えると、このルールもやむを得ないのかな、と思う。今のところ、ルパンで成功させるにはこの路線しかないのだ。

ルパン三世』の第一シリーズから参加し、『マモー編』の作画監督、そして『ルパン三世PARTIII』『バビロンの黄金伝説』の中心的スタッフであった青木雄三(当時:青木悠三)は、『ルパン三世(新)』終了後の同人誌のインタビューでこう語る。

ぼくは都会のルパンが好きだ。都会に生きるルパンってのが俺のスタイルだね。
具体的に言うとね、60年代のルパンはヨーロッパ‥‥あくまでフランスのルパンだ。途中で、大塚さん・宮崎さんの田園の、なおかつヨーロッパ調のルパンが出てきてさ‥‥、最後80年代にむかってどういくか‥‥ってとこで、ニューヨークの都会派ルパンが出てきたんだと思うね。
ぼくのシリーズの中で、都会のルパンしかつくりたくなかった。ルパンは都会の闇に動くんだね。シルエットのビルとネオンサイン‥‥その中をうごめくのがルパンだと思う。
「LUPIN THE THIRD Vol.1」(昭和55年12月7日発行/同人誌)『YUZO-AOKI in BroadWay』

この青木の「都会派ルパン」のコンセプトは、『ルパン三世PARTIII』の初期オープニングで表現されているし、『バビロンの黄金伝説』でのニューヨークを舞台にしたシーンでも活かされている。

ルパンが本当に好きな人、元制作者だけでそれを作ってくれるならいいが、マスコミは視聴率の世界。40年前の感性でそのまま放送できる規制環境と視聴者層を整えないと無理だ。ルパンをルパンらしく放送できない。プロデューサーが「視聴者向けに現代風アレンジを」と言ってしまったらそれはルパンじゃなくなる。
だったら、「本来の姿で作れるもの」を作ったらいいが、それに投資できない人が世の中牛耳ってる。投資できないだけならまだしも理解する気もない。

http://d.hatena.ne.jp/TM2501/20120310/1331348372

40年前の感性が基礎の部分にあっても僕は良いと思う。その感性を時代に合わせた、なおかつその作品が一番輝ける手段を使えば。上記の青木雄三による「大都会の闇をうごめくルパン」というのは、具体的なアプローチだと思うし、『ルパン三世PARTIII』は「内容の出来」としては賛否があるけど、「作品の世界観の確立」としては僕は成功したと思う。それはテレビスペシャルに乗り移って間違いなく今日まで続いているし、視聴率もそれなりに叩きだしているからマスコミ的にも失敗ではない。これまた余談だが、青木はそのノウハウを使い、こだま兼嗣とタッグを組んで『シティーハンターシリーズ』を大ヒットに導いている。

じゃあ、「2012年のルパン」は?これからルパンというコンテンツを継続していくためには何が必要なのか?今度のテレビ新シリーズは、不二子を軸に据えた「女」の部分を強調するらしいけど、これはものすごい賭けだな…と個人的に思う。現在のところ、ルパンで成功させるためには、「薄幸の美少女をヒロインにして、ルパンが彼女たちを助けてハッピーエンドにする話をテレコムが作る」という『カリオストロの城』路線しかない。それを、峰不二子という魔性を軸に据えるのだから。「女」を描くのはとてつもなく難しい。イメージビジュアルから見るに、PARTIIIよりも更に原作っぽい尖ったものになるようだが、これは試験的なものだとも言える。これが「売れなかった」ときが一番怖い(深夜枠での放送なので、視聴率よりもソフトがどれだけ売れるか、だと思うので)。ただ、僕はこのビジュアルはかなり好きだったりする(特に次元大介)。

メインキャストをほぼ一新したことで、従来のルパンのルールからの脱皮を試みているのならば、それはそれで見守ってみたいかもしれない。若き日のルパン、というのも、従来の設定から変化させているわけだし、この変化がどのような化学反応を起こすのか。新たな成功パターンを確立できるのか。(作品の内容ではなく視聴者の評価が)結構楽しみだったりする。

最後に……

ルパン三世 お宝返却大作戦!! [DVD]

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僕もid:TM2501さんと同じく「お宝返却大作戦」は好きだったり。テレビスペシャルの中では間違いなく五指に入る。

でも、やっぱり見ていて面白いのはこれかなー。

ワルサーP-38 ― ルパン三世 TVスペシャル第9弾 [DVD]

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