一文字違えば全然違う

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既にこのCMをご覧になった方も大勢いらっしゃると思います。CMキャラクターは近藤正臣です。あの近藤正臣です。

70年代は『柔道一直線』で足でピアノを踏んだかと思えば、NHK大河ドラマ国盗り物語』で明智光秀を好演。80年代には、ニヒルでキザでカッコイイ役柄を演じ続けてきた俳優。僕の好きな必殺シリーズでは……『必殺仕掛人』18話「夢を買います恨みも買います」で、理想に翻弄されつつもあえて自らの理想に抗わず殉じていく侍・竹宮源之丞、『新必殺からくり人』では山田五十鈴扮する泣き節お艶の一座に転がり込み、そのまま黒子として京までの旅を続けた“殺し屋”高野長英を演じました。『必殺剣劇人』でのカルタの綾太郎は一転してユニークなキャラクターでしたが、その数年後に必殺シリーズのスタッフが製作した『江戸中町奉行所』での水流添我童は、往年の近藤が得意としていたようなキャラクターであり僕のお気に入りの一人です。

少し前置きが長くなりました。近藤正臣といえば、当時は前述のとおり「キザでニヒルな二枚目」という役柄でして、普通俳優はそうした「役向きのイメージ」を大切にするんですが、90年代に入ると、彼はなぜかタヌキや河童の着ぐるみを着て「金鳥の蚊取り線香」のCMに登場します。これは話題になりました。当時、金鳥大日本除虫菊)が一社でスポンサーを務めていたバラエティ番組『新伍&紳助のあぶない話』にゲスト出演した際、旧知の仲である山城新伍からも「着ぐるみ」を着たCMのことを突っ込まれていました。

そんなわけで、僕の中ではかなり好きな部類に入る近藤正臣が、久しぶりに、しかもちょっとインパクトのあるCMに登場しているのだから、初めて見たときはお腹を抱えて笑いました。大袈裟な表現ではありません。本当に笑いました。

しかも、この「コンドーです」っていうのは、昔片岡鶴太郎近藤正臣のモノマネをしていたのを逆手に取ったんじゃないか…と思わせるわけです。当時、片岡鶴太郎がこのモノマネをしていたときに、近藤本人は「僕はそんな喋り方をしない」と否定していたはずですが、それを20年以上経った今になって…しかも本人がやるんかい!と心の中でツッコミを入れてしまいました。最近はテレビよりもむしろ舞台に力を注いでいる近藤正臣ですが、山崎努レベルでCMにバンバン出てきて欲しいと思うのです。

結局、この記事で何が言いたいのかというと「普段そのような素振りを見せない人が、大胆にハメを外すのは最高に面白い」ということです。それも「大真面目にハメを外す」ことです。普段の振る舞いとハメを外したときの振る舞いの落差が大きければ大きいほど、そこに笑いと新たな魅力、そして個性が浮かび上がるわけです。

こういうのは、狙ってやると大抵失敗します。僕は何度も経験しています。逆に、緻密な計算と計画を立てて実行した完璧な「外し」は大爆笑を生みとても魅力的に映ります。例えば、アニメやゲームなんかの「メタフィクション」なんかはそうですね(『戦闘メカ ザブングル』など)。

これを意図せず自然にやれちゃう人もいるわけです。僕はそういう才能のある人がとても羨ましい。笑いのセンスに長けていたり、空気を読むのが上手かったりとか、外すところをしっかりと捉えているんだな……という気がします。もちろん努力もあるのでしょうが、やはりそれはセンスなんでしょうね。生まれ持ったセンスが、努力によって磨かれていくのでしょう。

「一文字違えば全然違う」文字ではないですが、人間の中身だって環境が違えば全然違うものになっていくわけです。そこを、面白おかしく楽しめる。そして、周囲も楽しませることができるような、そんな素晴らしいギャップを持った人間になるのが一番の理想ですね。僕にとってはとてもハードルが高いことですが。

うーん、文が上手くまとまらなかったか。